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<朗読>正岡子規「病床六尺」を読む【第二十四回】



『病牀六尺』は、松山出身の文人・正岡子規が、明治35年5月5日から亡くなる2日前の

9月17日まで、死の病と向き合う苦しみ・不安、日々のたわいもない日常の風景、介護し

てくれる家族のこと、文学、芸術、宗教など日々心の底から湧いてくる気持ちを日々書き綴

った随筆です。日本人に100年以上読み継がれる名作ですが、同時に死と向き合う心情を赤

裸々に包み隠さず表現した闘病記録です。透明な躍動感とユーモアを放つ子規文学の「響き」をお届けします。





<本文>

○近作数首。

悼清国蘇山人

陽炎や日本の土にかりもがり

送別

君を送る狗ころ柳散る頃に

欧羅巴へ行く人の許へ根岸の笹の雪を贈りて

日本の春の名残や豆腐汁

無事庵久しく病に臥したりしが此

頃みまかりぬと聞きて

時鳥辞世の一句無かりしや

鳴雪翁の書画帖に拙くも瓶中の芍

薬を写生して自ら二句を賛す

芍薬の衰へて在り枕許

芍薬を画く牡丹に似も似ずも

謡曲殺生石を読みて口占数句

玉虫の穴を出でたる光りかな

化物の名所通るや春の雨

殺生石の空や遥かに帰る雁


正岡子規「病牀六尺」

初出:「日本」1902(明治35)年5月5日~9月17日(「病牀六尺未定稿」の初出は「子規全集 第十四巻」アルス1926(大正15)年8月)

底本:病牀六尺

出版社:岩波文庫、岩波書店

初版発行日:1927(昭和2)年7月10日、1984(昭和59)年7月16日改版

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