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<朗読>正岡子規「病床六尺」を読む【第十五回】



『病牀六尺』は、松山出身の文人・正岡子規が、明治35年5月5日から亡くなる2日前の

9月17日まで、死の病と向き合う苦しみ・不安、日々のたわいもない日常の風景、介護し

てくれる家族のこと、文学、芸術、宗教など日々心の底から湧いてくる気持ちを日々書き綴

った随筆です。日本人に100年以上読み継がれる名作ですが、同時に死と向き合う心情を赤

裸々に包み隠さず表現した闘病記録です。透明な躍動感とユーモアを放つ子規文学の「響き」をお届けします。





<本文>

 病に寐てより既に六、七年、車に載せられて一年に両三度出ることも一昨年以来全く出来なくなりて、ずんずんと変つて行く東京の有様は僅に新聞で読み、来る人に聞くばかりのことで、何を見たいと思ふても最早我が力に及ばなくなつた。そこで自分の見た事のないもので、ちよつと見たいと思ふ物を挙げると、

 一、活動写真

 一、自転車の競争及び曲乗

 一、動物園の獅子及び駝鳥

 一、浅草水族館

 一、浅草花屋敷の狒々及び獺

 一、見附の取除け跡

 一、丸の内の楠公の像

 一、自働電話及び紅色郵便箱

 一、ビヤホール

 一、女剣舞及び洋式演劇

 一、鰕茶袴の運動会

など数ふるに暇がない。


正岡子規「病牀六尺」

初出:「日本」1902(明治35)年5月5日~9月17日(「病牀六尺未定稿」の初出は「子規全集 第十四巻」アルス1926(大正15)年8月)

底本:病牀六尺

出版社:岩波文庫、岩波書店

初版発行日:1927(昭和2)年7月10日、1984(昭和59)年7月16日改版

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