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真民さんからの言葉 第十八回「とろろあおい」


とろろあおい

 

とろろあおいは

あさがおや

ゆうがおより

もろくはかない花だ

その初一輪を

妻が仏前に供えている

うす黄色の

大きな花で

深窓のたおやめのような

花ゆえに

コップに活けてある

じっと見ていると

かすかないのちの

花のよろこびようが

わたしに伝わってくる






ー坂村真民「とろろあおい」



<解説>

この詩は、真民が66歳の時の詩ですね。

とろろあおい、という花は、芙蓉やムクゲと同じアオイ科の花で、薄い黄色の美しい花を咲かせる花ですね。

真民は、この花を、深窓(しんそう)のたおやめのような、もろくはかない花だと言っていますが、深窓(しんそう)のたおやめとは、大きな家の奥深いところで、大事に大事にされている、しとやかな女性という意味ですね。

また、かすかな命の花とも言っていますが、この花は、朝咲いて、夕方にしぼみ、夜には散ってしまう、一日限りの花なのですね。

真民が好きになる要素が、ほぼすべて入っている花ですね。




砥部町立坂村真民記念館

館長 西澤孝一



 




企画展

かなしみを あたためあって あるいてゆこう

村真民の世界


2021年10月1日(金)〜2022年2月27日(日)


坂村真民記念館





 


ー坂村真民ー


1909(明治42)年、熊本県玉名郡府本村(現・荒尾市)生まれ。本名、昻(たかし)。

八歳の時、父親が急逝し、どん底の生活の中、母を支えた。

神宮皇學館(現・皇學館大学)卒業後、熊本で教員となり、その後、朝鮮に渡って高等女学校、師範学校の教師に。

終戦後、愛媛県に移住し、高校の国語教師を勤めながら詩を作り続けた。毎月詩誌「詩国」を発行し無償で全国の読者に届ける。

58歳の時、砥部町に定住し、65歳で退職後は詩作に専念。

2006(平成18)年、97歳で永眠。

一遍上人を敬愛し、「タンポポ堂」と称する居を構え、毎日午前零時に起床。夜明けに重信川のほとりで地球に祈りを捧げるのが日課であった。

飾らない素朴な言葉で人生を歌い続け、その詩の数々は、多くの人に優しさや勇気、そして希望を与え続けている。さらに、慈しみの心にあふれた人柄や生き方は、老若男女幅広い層から支持されている。

(写真は90歳のときのものです)



 


ー坂村真民記念館 館長 西澤 孝一(にしざわ こういち)ー


(プロフィール)

愛媛県庁職員退職後、坂村真民記念館開館から館長に就任。真民の家族として最後を看取った。


(著 書)

「天を仰いでー坂村真民箴言詩集」(編集)(2019年、致知出版社)

「かなしみをあたためあってあるいてゆこう」(2017年、致知出版社)

「自分の道をまっすぐゆこう」(監修)(2012年、PHP研究所)


坂村真民記念館: 愛媛県伊予郡砥部町大南705 

(TEL:089-969-3643)

(FAX:089-969-3644)


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