「坂村真民の生き方」については、これまで何回か切り口を変えて企画展・特別展を開催してきましたが、今回は、「厳しく自分を戒め、今日より明日へ向かって生きる」という生き方の、「明日に向かって前向きに生きる」という所に焦点を当てて企画しました。
サブタイトルとして掲げた言葉「できるだけうれしいうたをつくろう」は、「うた」という詩の言葉ですが、前向きに生きる真民さんの思いを一番良く表している詩だと思います。
今年も正月早々から、悲しい事故・災害が発生して、なかなか「希望の光」が見えにくい年になりそうですが、そういう中でも、こつこつと自分の出来ることを実践し、前に向かって生きることを詠った詩を作り続けた「真民さんの生き方」は、皆さんの心に「生きる希望と勇気」を湧き起らせてくれるものと思います。
そして、今回の特別展の構成を考えているときに、私がずっと思っていたことは、真民がその「厳しく自分を戒め、そこから明日に向かって生きる」という生き方を生涯続けることができたのは、家族の支えがあったからこそ、ということです。
真民さんの詩に「捨てず」という詩がありますが、私からすれば、逆に家族から「捨てられず」にいたからこそ、その生き方を続けられたのだと思うのです。
「真民さんの生き方」を根底で支えていたのは、家族の愛であり、特に妻の物心両面の支えがなければ、到底「真民さんの生き方」を貫くことはできなかったであろうと思うのです。
今回の特別展のポスターの案を考えている時、そのことをしきりに思い、それをどう表現するか、色々考えた末にたどり着いたのが、家族5人が手をつなぎ、前に向かって歩く姿の絵なのです。
そして、この家族の手が、さらに周りの人々の手につながって
ずっと地球上のすべての人々とつながることが、真民のねがいであり、そのためにどう生きるかを考え、そこへ向かって、こつこつと
努力してゆくことが、「真民さんの生き方」であったと思います。
砥部町立坂村真民記念館
館長 西澤孝一
開館12周年記念特別展
真民さんの生き方
2024年3月2日(土)〜2024年6月30日(日)
坂村真民記念館
ー坂村真民ー
1909(明治42)年、熊本県玉名郡府本村(現・荒尾市)生まれ。本名、昻(たかし)。
八歳の時、父親が急逝し、どん底の生活の中、母を支えた。
神宮皇學館(現・皇學館大学)卒業後、熊本で教員となり、その後、朝鮮に渡って高等女学校、師範学校の教師に。
終戦後、愛媛県に移住し、高校の国語教師を勤めながら詩を作り続けた。毎月詩誌「詩国」を発行し無償で全国の読者に届ける。
58歳の時、砥部町に定住し、65歳で退職後は詩作に専念。
2006(平成18)年、97歳で永眠。
一遍上人を敬愛し、「タンポポ堂」と称する居を構え、毎日午前零時に起床。夜明けに重信川のほとりで地球に祈りを捧げるのが日課であった。
飾らない素朴な言葉で人生を歌い続け、その詩の数々は、多くの人に優しさや勇気、そして希望を与え続けている。さらに、慈しみの心にあふれた人柄や生き方は、老若男女幅広い層から支持されている。
(写真は90歳のときのものです)
ー坂村真民記念館 館長 西澤 孝一(にしざわ こういち)ー
(プロフィール)
愛媛県庁職員退職後、坂村真民記念館開館から館長に就任。真民の家族として最後を看取った。
(著 書)
「天を仰いでー坂村真民箴言詩集」(編集)(2019年、致知出版社)
「かなしみをあたためあってあるいてゆこう」(2017年、致知出版社)
「自分の道をまっすぐゆこう」(監修)(2012年、PHP研究所)
坂村真民記念館: 愛媛県伊予郡砥部町大南705
(TEL:089-969-3643)
(FAX:089-969-3644)
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