力のかぎり
その力は小さくても
力のかぎり
生きてゆこう
その愛は小さくても
せい一ぱいの愛を傾け
生きてゆこう
時には切なく
生きる力を
失おうとする時があっても
力をふりしぼって
生きてゆこう
二度とない人生なのだ
ー坂村真民「力のかぎり」
<解説>
この詩は、真民88歳の時の詩ですね。
真民の妻・久代は、この3年前に「くも膜下出血」で倒れ、約半年入院した後、自宅療養をしていたのですが、再度手術が必要となり、明日手術が行われるという日に書かれた詩なのです。
62年間連れ添った、最愛の妻が、再度大きな手術をすることとなり、辛い思いを乗り越えるために、どんな小さな力でも、与えてほしい、そして、その力をふりしぼって、妻と共に、生きてゆきたい、という、真民のすがるような思いが込められた詩なのです。
ずっと寝たっきりで、だんだんと口もきけなくなり、話も出来なくなる妻を思い、ただただ生きていてくれ、という祈りを込めて、自分自身に向かって、どんなことがあっても、力をふりしぼって、力のかぎり生きるのだと、言い聞かせている詩ではないでしょうか。
砥部町立坂村真民記念館
館長 西澤孝一

開館10周年記念特別展
砥部の砥石で己れを磨け
〜97年の生涯を生き切った坂村真民の生き方〜
2022年3月5日(土)〜2022年8月28日(日)
坂村真民記念館

ー坂村真民ー
1909(明治42)年、熊本県玉名郡府本村(現・荒尾市)生まれ。本名、昻(たかし)。
八歳の時、父親が急逝し、どん底の生活の中、母を支えた。
神宮皇學館(現・皇學館大学)卒業後、熊本で教員となり、その後、朝鮮に渡って高等女学校、師範学校の教師に。
終戦後、愛媛県に移住し、高校の国語教師を勤めながら詩を作り続けた。毎月詩誌「詩国」を発行し無償で全国の読者に届ける。
58歳の時、砥部町に定住し、65歳で退職後は詩作に専念。
2006(平成18)年、97歳で永眠。
一遍上人を敬愛し、「タンポポ堂」と称する居を構え、毎日午前零時に起床。夜明けに重信川のほとりで地球に祈りを捧げるのが日課であった。
飾らない素朴な言葉で人生を歌い続け、その詩の数々は、多くの人に優しさや勇気、そして希望を与え続けている。さらに、慈しみの心にあふれた人柄や生き方は、老若男女幅広い層から支持されている。
(写真は90歳のときのものです)
ー坂村真民記念館 館長 西澤 孝一(にしざわ こういち)ー
(プロフィール)
愛媛県庁職員退職後、坂村真民記念館開館から館長に就任。真民の家族として最後を看取った。
(著 書)
「天を仰いでー坂村真民箴言詩集」(編集)(2019年、致知出版社)
「かなしみをあたためあってあるいてゆこう」(2017年、致知出版社)
「自分の道をまっすぐゆこう」(監修)(2012年、PHP研究所)
坂村真民記念館: 愛媛県伊予郡砥部町大南705
(TEL:089-969-3643)
(FAX:089-969-3644)
コメント